さとぅーの寝言

睡眠が大好きだけど大嫌いな駆け出しさんすうマンです。

閉集合の補集合は開集合

昨年の夏から友達と『多様体の基礎』を使って多様体の勉強会を開いているのですが,勉強会を始めてから間もなく,p.10の演習問題に苦しめられていました.
 

U\mathbb{R}^mの開集合のとき \mathbb{R}^m -U\mathbb{R}^m閉集合である.
また,C\mathbb{R}^m閉集合なら,\mathbb{R}^m -C\mathbb{R}^mの開集合である.
これを証明せよ.

 
前者の証明は本の巻末に載っていて,それを読んで理解したのですが,肝心の後者の証明は数学書お得意の「同様にして示される」で済まされていました.

その言葉を信じて自力で証明しようとしてみたら案外できず,小一時間話し合っても解決に至りませんでした…


そして最近,位相について手軽に勉強したくて,個人的に好きな30講シリーズの『位相への30講』を読んでました.すると, \mathbb{R}^2の開集合の補集合は閉集合であることの簡単な証明が書かれていました.

「これはもしかして,前に分からなかった閉集合の補集合が開集合であることの証明のヒントが載ってるんじゃないか?」

そんな淡い期待を持ちつつ読み進めていくと,とうとうその説明文に差し掛かりました.


「この証明はここでは省略しよう.」


…分かったよ.証明すればええんやろ!?やってやるよボケが!!!

軽く頭にきた僕はリベンジを果たすべく証明を考えました.

すると,思いのほか普通にできちゃいました.


くそ悩んでたあの時間は一体なんだったのか.


今回は,その思いついた証明を忘れないようにここでまとめておきます.
 
 
ここでは,\mathbb{R}^mの開集合,閉集合の定義などは分かっているものとして話を進めます.

また,証明中に出てくる「開集合」,「閉集合」はそれぞれ「\mathbb{R}^mの開集合」,「\mathbb{R}^m閉集合」を意味するものとします.

追記(2017/12/27)--------

多様体の基礎』では,「集合 F 上の任意の収束列について,その極限が必ず F 上にあるとき,F閉集合と呼ぶ」ことにしています.
その点に注意しながら,以下の証明を見ていただきたいと思います.

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証明)

\mathbb{R}^m-Cが開集合でないとする.

すると,どんなに小さい正数 \varepsilon をとっても

\displaystyle
    V_{\varepsilon}(a) \cap C \ne \phi \quad (\because 開集合の定義) \tag{1}

を満たすような点 a \in \mathbb{R}^m -C が存在する.

ここで,

\displaystyle
    x_n \in V_{\frac{1}{n}}(a) \cap C \tag{2}

を満たすような点列 \{x_n\}_{n=1}^{\infty} を考える.

すると,この点列は点 a に収束する.

また,点列 \{x_n\}_{n=1}^{\infty}閉集合 C に属する点のみで成っているので,閉集合の定義よりその収束点も C に属していなければならない.

よって,a \in C

しかし,これは a \in \mathbb{R}^m -C であることと矛盾する.

すなわち,\mathbb{R}^m -C は開集合でなければならない. \blacksquare


久しぶりに数学の記事を書いたので,何かを満たされた気分になりました…

証明でおかしな点があれば教えてください.