さとぅーの寝言

睡眠が大好きだけど大嫌いな駆け出しさんすうマンです。

大学編入試験の過去問解説(5)-広義積分の収束判定

前回:大学編入試験の過去問解説(4)-ふとうしきとあそぼう

 
高専を卒業し,大学生活が始まってから早1ヶ月.

大学生活たーのしー!

ていうか

すうがくたーのしー!!!


とりあえず,今のとこ充実しまくってます.


そして現在GWを満喫中なんですが,なんと,

9  連  休

これが大学生の特権だというのか…


そしてそして,今月の13日には,初めてのロマ数@大阪に行ってきます!

romanticmathnight.org


もうわくわくが止まりません.



今回取り上げる問題は『解析概論』先輩から知恵を借りながら頑張って解いた問題になります.*1

色々と適当なところがありますが,まぁ参考程度に見てやってください.
 
 

(1) 空間上の直交座標 (x,y,z)極座標 (r,\theta , \phi )x=r \, \mathrm{sin} \, \theta \, \mathrm{cos} \, \varphi, \, y=r \, \mathrm{sin} \, \theta \, \mathrm{sin} \, \varphi, \, z=r \, \mathrm{cos} \, \theta \quad (r>0, \, 0 \le \theta \le \pi , \, 0 \le \varphi \le 2\pi )
に変換するとき,そのヤコビアンを計算しなさい.

(2) 広義積分

\displaystyle I( \alpha ) = \int^\infty_{-\infty} \int^\infty_{-\infty} \int^\infty_{-\infty} \frac{e^{-(x^2 + y^2 + z^2)} }{(x^2 + y^2 + z^2)^\alpha} dx \, dy \, dz 

について,\alpha=\frac{1}{2} のときの値 I(\frac{1}{2}) を求めなさい.

(3) I(\alpha) が収束する \alpha の範囲を求めなさい.

(4) 広義積分

\displaystyle J( \alpha , \beta ) = \iiint_{B} \frac{1}{(x^2 + y^2 + z^2)^\alpha | \mathrm{log}(x^2 + y^2 + z^2) |} dx \, dy \, dz 

が収束するような \alpha,\beta の満たすべき条件を求めなさい.
ただし,B=\{ (x,y,z);x^2 + y^2 + z^2 < \frac{1}{4} \} .



(1),(2)は簡単なので解説は省略します.

問題は(3),(4)なんやで…


先に断わっておきますが,結構解答が長くなってしまいました.

一応,限られた時間内に解かないといけない編入試験問題なので,もっと簡単に解く方法があるんじゃないかと思ったり思わなかったりです.

このことを踏まえた上で,読んで頂ければ幸いです.
 

以下から各設問の解説に飛べます.

 
 
 

設問(3)

まず,(1)のように変数変換すると I(\alpha)

\displaystyle
I(\alpha) = \int_0^\infty r^{2-2\alpha} e^{-r^2} dr \int_0^\pi \mathrm{sin} \, \theta \, d\theta \int_0^{2\pi} d\varphi

となりますが,\theta , \varphi に関する積分は明らかに収束するので,r に関する積分

\displaystyle I_r := \int_0^\infty r^{2-2\alpha} e^{-r^2} dr

の収束条件を調べればよいことになります.

\displaystyle f(r):=r^{2-2\alpha} e^{-r^2}

とおいて,I_r積分領域を分けると

\displaystyle I_r = \int_0^1 f(r) dr + \int_1^\infty f(r) dr

となり,ここでさらに

\displaystyle I_1 := \int_0^1 f(r) dr
\displaystyle I_2 := \int_1^\infty f(r) dr

とおきます.

これで下準備は終わりです.


今回,収束判定する上でミソとなるのは,以下の2つの広義積分が収束するという事実です.
 
\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{r^s} dr \quad (0 < s < 1) \tag{a}
\displaystyle \int_1^\infty \frac{1}{r^u} dr \quad (u>1) \tag{b}

これがどこで登場するかはお楽しみということで,本題に入りましょうかね.


根気よく場合分けして確かめていきますよ~


(1)2-2\alpha \le -1 のとき

I_1 について調べてみます.

r \in (0,1 ] のとき,r^{2-2\alpha} \ge r^{-1} なので,e^{-r^2} > 0 より I_1積分範囲において

\displaystyle f(r) = r^{2-2\alpha} e^{-r^2} \ge r^{-1} e^{-r^2}

が成り立ちます.

これより, 0 < c < 1 として

\displaystyle
\begin{align}
I_1 &= \lim_{c \to +0} \int_c^1 r^{2-2\alpha} e^{-r^2} dr \\
    &\ge \lim_{c \to +0} \int_c^1 r^{-1} e^{-r^2} dr \\
    &= -\lim_{c \to +0} e^{-c^2} \, \mathrm{log} \, c + \lim_{c \to +0} \int_c^1 2re^{-r^2} \mathrm{log} \, r \, dr \\
\end{align}

最後の式の1項目は収束しないので,このとき I_r は収束しないことが分かります.


(2)2-2\alpha > -1 のときの I_2

u>1 として,r^u f(r) について考えてみます.

u+2-2\alpha>0 であることに注意して,ロピタルの定理を繰り返し適用すると

\displaystyle \lim_{r\ \to \infty} r^u f(r) = \lim_{r\ \to \infty} \frac{r^{u+2-2\alpha}}{e^{r^2}} = 0

となります.*2

r^u f(r)[1,\infty) 上で連続なので,[1,\infty) 上で上に有界です(ここ少し曖昧).

よって,r \in [1,\infty) のとき,十分大きな M>0 に対して r^u f(r) < M が成り立つので,

\displaystyle f(r) < \frac{M}{r^u} \quad (r \in [1,\infty))

となります.


c > 1 として,[1,c] で f(r)積分します.

\displaystyle
\begin{align}
\int_1^c f(r) dr &< \int_1^c \frac{M}{r^u} dr \\
                 &= \frac{M}{u-1} \left( 1-\frac{1}{c^{u-1}} \right) \\
                 &< \frac{M}{u-1}
\end{align}

上の評価式では u > 1 であることを用いました.

\int_1^c f(r) drc の関数となりますが,c が増加すると積分領域が大きくなり,なおかつ常に f(r)>0 なので,\int_1^c f(r) dr は単調増加な関数となります.


以上の話をまとめると,\int_1^c f(r) drc の関数とみなすと,これは単調増加で [1,\infty) 上で上に有界な関数となることが分かりました.

単調増加で上に有界c の関数は,c \to \infty のときに収束することが知られているので,

\displaystyle I_2 = \lim_{c \to \infty} \int_1^c f(r) dr

は収束します.


ここで,最初に紹介した広義積分(b)が登場したことにお気づきでしょうか.

\int_1^c f(r) dr が上に有界であることを示すのに(b)が収束する性質を利用しているのです.

もし,0 < u < 1 ならば(b)は収束せず,上の評価式も

\displaystyle
\int_1^c f(r) dr < \frac{M}{1-u} \left( c^{1-u} -1 \right)

となり,c \to \infty のときに右辺は発散するので,\int_1^c f(r) dr[1,\infty) 上で上に有界となることを示せません.

1-u > 0 であることに注意!)

u>1 のときに(b)が収束するという性質がここで生きるというわけですね.


(3)2-2\alpha \ge 0 のときの I_1

[0,1] 上で f(r)有界なので,明らかに I_1 は収束します.


(4)-1 < 2-2\alpha <0 のときの I_1

\displaystyle
\lim_{r \to +0} f(r) = \lim_{r \to +0} \frac{e^{-r^2}}{r^{2\alpha -2}} = \infty

よって,f(r)(0,1] 上で有界ではありません.

そして今回は広義積分(a)を活用したいのですが,0 < s <1 である s としてどんなものを選んでも良いわけではありません.

理由はいずれ分かりますので,とりあえずは適当な s を一つ決めることから始めます.


-1 < 2-2\alpha < 0 を満たす任意の 2-2\alpha に対して,0 < 2\alpha -2 < 1 であるので,s=2\alpha -2 とすれば 0 < s < 1 となります.

上のような s を選んだうえで,r^s f(r) について考えてみます.

\displaystyle \lim_{r \to +0} r^s f(r) = \lim_{r \to +0} \frac{r^{s+2-2\alpha}}{e^{r^2}} = \lim_{r \to +0} \frac{1}{e^{r^2}} = 1

r^s f(r)(0,1] 上で連続なので,(0,1] 上で上に有界となります(ここも少し曖昧).

もし,ここで 0 < s < 2\alpha -2 < 1 となる s をとってしまうと,上の極限は収束しないので,上に有界であることが言えなくなります.

よって,r\in(0,1] のとき,十分大きな N>0 に対して r^s f(r) < N が成り立つので,

\displaystyle f(r) < \frac{N}{r^s} \quad (r \in (0,1 ] )

となります.


あとは,0 < c < 1 として(2)と同様に

\displaystyle
\displaystyle
\begin{align}
\int_c^1 f(r) dr &< \int_c^1 \frac{N}{r^s} dr \\
                 &= \frac{N}{1-s} \left( 1-\frac{1}{c^{1-s}} \right) \\
                 &< \frac{N}{1-s}
\end{align}

という評価式を得ます.

ここで,J(c) := \int_c^1 f(r) dr とおくと, c_n \to +0 \, (n \to \infty) となる任意の (0,1] 上の単調減少数列 (c_n)_{n\in \mathbb{N}} に対して,数列 J(c_n) は単調増加でかつ上に有界なので,どんな (c_n) を選ぼうが n \to \infty のときに同じ値に収束します.

n が増加するにつれて積分領域が大きくなることに注意.てか,色々ぶっ飛ばしてますがどうかお許しを.)

よって,c \to +0 のとき,J(c) は収束,つまり

\displaystyle I_1 = \lim_{c \to +0} \int_c^1 f(r) dr

は収束します.*3


長くなったので,以上の議論(1)~(4)で分かったことをまとめます.

(1)2-2\alpha \le -1 のとき,I_r は発散
(2)2-2\alpha > -1 のとき,I_2 は収束
(3),(4)2-2\alpha > -1 のとき,I_1 は収束

以上より,2-2\alpha のときに I_r は収束するので,I(\alpha) の収束条件は

\alpha < \frac{3}{2}

であることが分かりました.



設問(4)

ごめん,萎えたわ(直球)

萎えたのでここの詳細はバッサリ省略します!

解法の大枠は設問(3)と同じなんで,まぁ省略しても大丈夫だよね(暴論)

申し訳程度に,僕の出した答えだけ載せておきます.

\{ (\alpha,\beta) | \alpha < \frac{3}{2}, \, \beta \in \mathbb{R} \} \cup \{ (\alpha,\beta) | \alpha = \frac{3}{2}, \, \beta > 1 \}

合ってたらいいなぁ…

気が向いたらここもきちんと解説したいと思います.気が向いたら.




今回は以上です.

雑になってしまったところが色々あったかと思いますが,雰囲気だけでもつかんで頂ければよいかと…

過去問解説の記事はしばらく書かないと思います.

もしかしたら今回で最後になるかもですね…


ていうか,僕が最初の編入試験を受けてから早1年が経とうとしているのか…

最初の受験校は府大だったのですが,まぁその体験談は今となっては笑い話にできますね.

その話が気になる方はこちらへどうぞ

大学編入への道のり(3) - さとぅーの寝言


進学を目指す今の高専5年生たちには,どうか後悔をすることのないように最後まで全力を出し切って欲しいものですね.

最後まで頑張ったらきっといいことあるよ.


それじゃあ,僕は残りのGWを楽しんできましょうかね.

もちろん数学で.


ばいばーい!
 
 

*1:『定本 解析概論』の定理36(p.115)からヒントをもらいました

*2:参考までに→指数関数の極限と爆発性 | 高校数学の美しい物語

*3:『解析入門Ⅰ』の定理6.2系(p.54)を参照