さとぅーの寝言

睡眠が大好きだけど大嫌いな駆け出しさんすうマンです。

複素解析ゼミノート(1) -一致の定理

ただ今,絶賛夏休みを満喫中でございます.

そして,めっきりブログの更新頻度が減ってしまいました.

てへぺろ


9月に入って,ようやく成績が発表されました.

まぁ,何とも言えない感じの成績でしたね.

後期はむつかしい授業が多いっぽいので,気合入れて頑張っていきましょうね.

とりま,夏休みの間にLebesgue積分のお勉強頑張ります.


今回から,6月より始めた複素解析ゼミで学んだことを適当にまとめていこうかなと思います.

「今さら記事にすんのかい」と思われるかもですが,最初の方は別にまとめんでもええかなって感じです.

というより,まとめる暇がありませんでした…

ゼミで使用しているテキストは,笠原乾吉さんの『複素解析 1変数解析関数』です.

まさかの文庫本です.

文庫本にしては色々書かれています.

僕の数学力だと,しばしば行間を埋めるのに苦労しますね…


この複素解析ゼミノートは,上で紹介したテキストの内容に沿ってまとめていくつもりです.

ということで,第一回目はテキストp.41の一致の定理を紹介していきます.



一致の定理は正則関数の強さを物語る定理の一つで,簡単に言うと「ある領域 D 上で定義された2つの正則関数が D 内のある曲線上または小領域上で一致していれば,D 上全体で両者が一致している」ことを保証してくれるものです.

この定理から解析接続のお話に繋がっていくそうですが,それについてはまた近い将来勉強してから記事にしたいですねぇ.

定理 2.1.1(一致の定理)

f(z),g(z) は領域 D で正則な関数とする.
このとき,次が成り立つ.

(i) 1点 a \in Df(a)=g(a), f^{(n)}(a)=g^{(n)}(a) \,(n \in \mathbb{N}) ならば,
D で恒等的に f(z)=g(z) である.

(ii) 1点 a \in Da に収束し z_k \ne a \,(k \in \mathbb{N}) である点列 \{ z_k \}  が存在し,
f(z_k) = g(z_k) \,(k \in \mathbb{N}) ならば D で恒等的に f(z)=g(z) である.

 
一致の定理を上の形で適用する機会は多分少ないです.

D 上のある1点の近傍またはある曲線上で f(z) \equiv g(z) であれば(ii)の仮定を満たすので,その形で一致の定理が用いられることが多いと思います.


この定理の証明ではTaylor展開と連結性を利用しますが,ここではそれらについて詳しく説明しません.

あと,h(z) := f(z)-g(z) とすると h(z)D 上で正則かつ h(z)=0 \Leftrightarrow f(z)=g(z) であるので,g(z) \equiv 0 として一致の定理が成り立つことを示せば十分です.

(i)の証明

集合 O_1, O_2

\displaystyle O_1 := \{ z \, ; z \in D , f(z)=0, f^{(n)}(z)=0 \, (n \in \mathbb{N}) \} \\ O_2 := D \backslash O_1

のように定めます.

このとき,O_1, O_2 が共に D の開集合でかつ O_1 \ne \emptyset であることが分かれば,D が連結であることから O_2 = \emptyset であることが示され,結局 D=O_1 であるので定理が示されます.

ここで D の開集合とは,ある \mathbb{C} の開集合 O により O \cap D と表される集合のことです.

D閉集合も同様にして定義されます.

仮定より O_1 \ne \emptyset であることはすぐに分かるので,あとは2つの集合が D の開集合であることを示すだけです.

(以下,特に断らない限り「開(閉)集合」は「D の開(閉)集合」を意味するものとします.)


まず,O_1 が開集合であることを示すのですが,O_1 \cap D = O_1 であることから \mathbb{C} の開集合であることを示せば十分です.

任意の点 w \in O_1 に対して D に含まれるように点 w のあるr-近傍 U_r(w) をとると,その近傍上で f(z) はTaylor展開可能で,

\displaystyle f(z) = \sum_{n=0}^\infty \frac{f^{(n)}(w)}{n!}(z-w)^n \quad (z \in U_r(w))

となります.

(ここで,f^{(0)}(w) = f(w) であると解釈しています.)

w \in O_1 より f(w)=0, f^{(n)}(w)=0 \, (n \in \mathbb{N}) であるから

\displaystyle f(z) \equiv 0 \quad (z \in U_r(w))

であることが分かります.

これより,U_r(w) 上全体で f(z)=0, f^{(n)}(z)=0 \, (n \in \mathbb{N}) であるから

\displaystyle U_r(w) \in O_1

という結論を得ます.

以上より,O_1 が開集合であることが分かりました.


次に,O_2 が開集合であることを示します.

ここで,O_1 のときと同じような方針で示したくなりますが,そもそも O_2空集合であるかもしれないので,「O_2 から任意の点をとる」といったことができないはずです.

ですので,「閉集合の補集合は開集合である」という性質を用いて,O_2 が開集合となることを確かめるためにその補集合である O_1閉集合であることを示したいと思います.

ここで,僕の小言挟まさせてください.
そもそも,O_1閉集合であることを示せた時点で,O_2 がどうとか関係なく直ちに D=O_1 が言えるはずです.
なぜなら,O_1 は開集合かつ閉集合であることが分かり,そのような集合は空集合を除いて D しか存在しないからです.
要するに,僕は O_2 を考える必要なんてなかったのではと考えています.
しかし,テキストでは連結性について深く説明していないので*1,今回のような証明の方針をとっているのだと思いました.

というか,テキストが何をもって 「O_2 が開集合である」と言っているのか僕にはよく分かりませんでした.
その辺を頭に入れて読んでいただけると幸いです.

正則関数は無限回微分可能であることが知られているので,f(z), f^{(n)}(z) \, (n \in \mathbb{N}) は連続であることが分かります.

ここで,O_1 上にある任意の収束点列 \{ z_k \} をとり,その極限が z_0 \in D であるとすると,連続性と O_1 の定義から

\displaystyle f(z_0) = \lim_{k \to \infty} f(z_k) = 0
\displaystyle f^{(n)}(z_0) = \lim_{k \to \infty} f^{(n)}(z_k) = 0 \quad (n \in \mathbb{N})

となります.

これより z_0 \in O_1 となり,O_1閉集合であることが分かりました.

よって,O_2 も開集合であることが分かりました.


以上より,D=O_1 であるので(i)が示されました.\square


(ii)の証明

D に含まれるように ar-近傍 U_r(a) をとり,その上で f(z)

\displaystyle f(z) = \sum_{n=0}^\infty c_n (z-a)^n

と展開されるとします.

もし,c_n =0 \, (n=0,1,2,\cdots) であることが分かれば a は(i)の仮定を満たし,結論を得ることができます.

ここでは,背理法によりこれを示します.


c_0 = \cdots = c_{n-1} = 0, c_n \ne 0 であるとします.

すると,

\displaystyle f(z) = (z-a)^n \{ c_n + c_{n-1}(z-a) + \cdots \} \quad (z \in U_r(a))

となり,ここで \varphi (z) := \{ c_n + c_{n-1}(z-a) + \cdots \} とおきます.

仮定より f(z_k) = 0, z_k \ne a であるから,展開した式に z_k を代入することにより直ちに \varphi (z_k) = 0 \, (k \in \mathbb{N}) を得ます.

さらに,f(z), (z-a)^n が連続であるから \varphi(z) も連続であるので,

\displaystyle \varphi(a) = \lim_{k \to \infty} \varphi(z_k) = 0

であることが分かります.

よって,\varphi(a) = c_n であるので c_n = 0 が得られました.

しかし,これは c_n \ne 0 であることに反するので,背理法により c_n =0 \, (n=0,1,2,\cdots) であることが示されました.\square



一致の定理より,領域D 上で恒等的に0でない正則関数の零点が孤立していることも分かります.

f(z) の零点とは,f(z)=0 となる点 z のことを言います.)

つまり,零点のある除外近傍内に零点が存在しないことを意味します.

もし,その正則関数の零点が孤立していなかったら(ii)より D 上で恒等的に0となってしまい,仮定に反するからです.



とりま,今回はこの辺にしておきます.

数学の記事を書いていると自分の無学さに気づけることがよくあるので,これからも頑張って更新していきたいっすね.

*1:テキストp.243の付録Ⅰを参照