さとぅーの寝言

睡眠が大好きだけど大嫌いな駆け出しさんすうマンです。

写像による像,逆像

高専4年の夏,僕は大阪大学オープンキャンパスに行ってきました.

そこで,編入学した現役阪大生に質問する機会がありました.




わし「編入するまでにした方が良いことはありますか?」

先輩「集合・位相の勉強した方が良いよ.でないと授業についていけない.」




なるほどな.

言われなきゃ絶対勉強してなかったわ.




そんなわけで,『集合・位相入門』をがんばって読み進めています.

先輩には「松坂先生の本は難しいからやめといた方がいいよ」と言われたのですが…




そんなこと言われたら逆に読みたくなっちゃうじゃないですか!!!




今回はp.31に載っている,写像による像,逆像に関する定理についてまとめようと思います.

全部まとめるのはさすがにしんどいんで一部だけってことで.

f \,A\,からB\,への写像とするとき,f\,による像および逆像(原像)について,次のことが成り立つ.
ただし,P,\, P_1,\, P_2 \,A \,の部分集合,Q,\, Q_1,\, Q_2\,B\,の部分集合である.

 \displaystyle f(P_1 \cap P_2) \subset f(P_1) \cap f(P_2) \tag{4.3} 
 \displaystyle f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) = f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2) \tag{4.3'} 
 \displaystyle f(f^{-1}(Q)) \subset Q \tag{4.5'} 

 

本題に入る前に,なぜこれを取り上げようと思ったのかというと,なんとびっくり,これらの証明が大学編入学試験で出題されたからなんですね~


し か も 僕 が 受 験 し た 年 に


こんな物好きな問題を出すとこなんて,だいぶ限られますね.
出題校ばれちゃうね.





これらの証明を本で読んだとき,「うわぁ,あのときの解答間違ってるやんけ…」ってなりました.



試験中のわし「あれwwwwこれ証明できちゃったんじゃねwwwwwwww」



あの時の自分にラリアットを食らわせてやりたいです.





この辺の詳しい話はあとにして,まずは定理の証明を見ていきましょう.


まず,今回示す3つの式をよく見ると,等号が成り立つのは式(4.3')のみで,あとの2つは必ずしも等号が成り立たないのです.

僕は試験のとき,この点にまんまと引っかかったというわけですね(半ギレ

とりあえず,最初は等号が成り立つ(4.3')から証明してった方が良いかなと勝手に思ったので,そうさせていただきます.

(4.3')の証明

(4.3')が成り立つことを示すためには,

 f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \subset f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2) \tag{a}
 f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \supset f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2) \tag{b}

この両方が成り立つことを示さなければなりません.

まずは(a)が成り立つことを示します.

Q_1 \cap Q_2 \subset Q_1であるから,f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \subset f^{-1}(Q_1).
同様にして,f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \subset f^{-1}(Q_2).

したがって, f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \subset f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2)

 
ここでは同じくp.31に載ってる

 \displaystyle Q_1 \subset Q_2 \Rightarrow f^{-1}(Q_1) \subset f^{-1}(Q_2) \tag{4.1'}

を利用しています.

本ではこれが成り立つのは自明だとしていますが,「 Q_1 \subset Q_2 のとき,q \in Q_1 \Rightarrow q \in Q_2 が成り立つ」ということを改めて考えれば,(4.1')が自明であることは分かると思います.

 f^{-1}(Q_1 \cap Q_2)f^{-1}(Q_1)f^{-1}(Q_2) のどちらにも含まれるので,結局

 \displaystyle f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \subset f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2)

が成り立つというわけですね.


次に(b)が成り立つことを示します.

a \in f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2) とすれば, a \in f^{-1}(Q_1) かつ  a \in f^{-1}(Q_2) a \in f^{-1}(Q_1) なので f(a) \in Q_1.
同様に, f(a) \in Q_2.

以上より  f(a) \in Q_1 \cap Q_2 が成り立つので  a \in f^{-1}(Q_1 \cap Q_2).

したがって, f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) \supset f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2)


 f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2) に属する任意の a をとると,その a は必ず  f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) にも属することが言えたので,結局(b)が成り立つというわけですね.


というわけで,(a)と(b)の両方が成り立つことが証明できたので,

 \displaystyle f^{-1}(Q_1 \cap Q_2) = f^{-1}(Q_1) \cap f^{-1}(Q_2) \tag{4.3'}

が証明できたというわけでございます.

(4.3)の証明

前述の証明と同様にして,

 f(P_1 \cap P_2) \subset f(P_1) \cap f(P_2)

であることが分かります.


これで(4.3)の証明はできたわけなんですが,本題は

 f(P_1 \cap P_2) \color{red}{\supset} f(P_1) \cap f(P_2) \tag{c}

が成り立つかどうかですよね.


ここで一つ例を考えてみましょう.

 A=B=\mathbb{N} \, (\mathbb{N}:自然数全体の集合)として,写像 f:A \rightarrow B f(a) = 1 \quad (a \in A)

によって定め, P_1 = \{偶数全体\},\, P_2 = \{奇数全体\} とする.


すると,P_1 \cap P_2 = \phi となるので

 f(P_1 \cap P_2) = \phi.


一方, f(P_1) = f(P_2) = \{1\} であるので

 f(P_1) \cap f(P_2) = \{1\}.


したがって,この例において  f(P_1 \cap P_2) \supset f(P_1) \cap f(P_2)成り立たない


てな感じで(c)の反例が存在するので,

 f(P_1 \cap P_2) \neq f(P_1) \cap f(P_2)

となるわけなんすね~


ちなみに,試験では  f(P_1 \cap P_2) = f(P_1) \cap f(P_2) が成り立つかどうかを問われたわけなんですが,僕は  f(P_1 \cap P_2) \subset f(P_1) \cap f(P_2) が成り立つことだけを示して,問題を証明した気になってました.

まぁ,それすらも示せていたのかどうかも怪しいですが.


なんとも哀れ.


具体的には以下のように解答してました(たぶん

 x \in P_1 \cap P_2である任意の x をとると, f(x) \in f(P_1 \cap P_2).
また, x \in P_1 かつ  x \in P_2 であるので, f(x) \in f(P_1)かつ f(x) \in f(P_2).
つまり, f(x) \in f(P_1) \cap f(P_2)

したがって, f(P_1 \cap P_2) = f(P_1) \cap f(P_2) ←違う


懺悔はもうこれくらいでいいでしょう…

(4.5')の証明

 b \in f(f^{-1}(Q)) とすれば,f(a) = b となるような  a \, (\in f^{-1}(Q)) が存在する.
 a \in f^{-1}(Q) なので, f(a) \in Q.
仮定より f(a) = b なので,b \in Q.

したがって, f(f^{-1}(Q)) \subset Q


 f(f^{-1}(Q)) に属する任意の b をとると,その b はまた  Q にも属していることが言えたので,(4.5')の証明はひとまずできました.


続いては, f(f^{-1}(Q)) \supset Q の反例を前述の例を再び用いて示します.

Q=B とすれば  f^{-1}(Q)=A であるが,
明らかに  f(f^{-1}(Q)) = f(A) = \{1\} である.

したがって,この例において  f(f^{-1}(Q)) \supset Q は成り立たない.

 
ここでも等号は成り立たず,

 f(f^{-1}(Q)) \neq Q

というわけです.





最近はひたすら卒研に追われて,なかなかさんすうのお勉強ができておりません…

ぷよぐやみんぐつらひ…


今度は集合の濃度に関するお話が面白そうなんで,そこについてまとめようかなぁと思ったり思わなかったりです.


そんじゃあまた