さとぅーの寝言

睡眠が大好きだけど大嫌いな駆け出しさんすうマンです。

さんすうのーと(2) ―連続写像

前回:開基・準開基


とうとう1年が終わってしまいますね…

今年の春に大学へ編入し,ようやく数学に没頭できる環境に身を置くことができ,お陰様で(特に数学の面において)大きく成長できた年なんじゃないかと思います.

同時に,自分の無学さを思い知る機会も多くあったので,まだまだこれからといった感じですね.


そんなわけで今回は,距離空間上の連続写像に関する重要な命題を取り上げようと思います.


解析学の授業で,ε-δ論法による連続関数の定義を学んだ方は多いと思います.

距離空間におけるの連続写像も同様に定義されるのですが,その定義と同値な命題が色々と存在します.

そして,今回取り上げる同値な命題には「距離」を用いた表現が一切含まれておりません.

つまり,その命題の中では距離関数を用いていないということです.


「距離関数を用いていない」という所が大変重要であり,より一般の位相空間上に連続写像の概念を拡張することができます.

位相空間には「近さ」の概念はあるものの,距離空間のように「近さ」を数値化することができません.

なので,位相空間上に連続写像の概念を拡張する上で,ε-δ論法による定義じゃいかんわけです.


動機づけはこれくらいにして,本題に移っていきましょうね.

Def. (距離空間上の連続写像)

 (X, d_X), (Y, d_Y)距離空間とする.このとき,写像 f \colon X \to Y が点 x_0 \in X で連続であるとは,

\displaystyle \tag{a} \forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0, \forall x \in X, [x \in B(x_0, \delta) \Rightarrow f(x) \in B(f(x_0); \varepsilon)] 

が成り立つことをいう.そして,上記f が任意の点で連続であるとき,f連続写像という.\square

 
上の(a)は次のように書き換えることができ,下の表現の方が便利です:


 \forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0, f(B(x_0; \delta)) \subset B(f(x_0); \varepsilon)

 \displaystyle \forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0, B(x_0; \delta) \subset f^{-1}(B(f(x_0); \varepsilon))

 

Prop.
(上の定義中の設定を引き継ぐ.)

 f連続写像である.
     \Leftrightarrow 任意の Y の開集合 O に対し, f^{-1}(O)X の開集合となる. \square


「開集合」の概念は位相空間にもあるので,これにより,位相空間における連続写像を「任意の開集合の逆像が開集合となるような写像」と定義してよいだろうということになります.

ε-δ論法による定義が近傍を用いた命題と同値であることを示し,それを利用して連続写像の概念を位相空間に拡張する方が自然であるような気もしますが,どうなんでしょうね.
少なくとも,内田先生の『集合と位相』では,位相空間における連続写像の定義として近傍を用いたものを採用しています.
まぁ,どっちにしろ,開集合を用いた命題がものすごく便利であることには変わりないでしょう.

あと,ここでは示しませんが,命題中に出てくる「開集合」を全て「閉集合」に置き換えても同値が成り立ちます.


Proof

 \mathcal{O}_X, \mathcal{O}_Y をそれぞれ X, Y の開集合全体の集合とおく.

(i) " \Leftarrow" が成り立つことの証明

x \in X を任意にとり,固定する.任意の \varepsilon > 0 に対し, B(f(x); \varepsilon) \in \mathcal{O}_Yであるから,仮定より

 f^{-1}(B(f(x); \varepsilon)) \in \mathcal{O}_X
 
となる. x \in f^{-1}(B(f(x); \varepsilon)) であるから,開集合の性質より,ある  \delta > 0 が存在して
 B(x; \delta) \subset f^{-1}(B(f(x); \varepsilon))
 
が成り立つ.つまり,f x \in X で連続である. x は任意にとっていたので,f連続写像である.


(ii) " \Rightarrow" が成り立つことの証明

 O \in \mathcal{O}_Y を任意にとり,固定する.任意の点  x \in f^{-1}(O) に対し, f(x) \in O であるから,開集合の性質よりある  \varepsilon > 0 が存在して

 B(f(x); \varepsilon) \subset O
 
となる.これより,

 \tag{b} f^{-1}(B(f(x); \varepsilon)) \subset f^{-1}(O) 

が成り立つ.また,仮定よりある  \delta > 0 が存在して

 \tag{c} B(x; \delta) \subset f^{-1}(B(f(x); \varepsilon))

となる.(b),(c)より,x \in X f^{-1}(O) の内点であるから, f^{-1}(O) \in \mathcal{O}_X となる. O \in \mathcal{O}_Y は任意にとっていたので,以上より示された. \square



おそらく,年内の更新はこれで最後でしょうね.

それではみなさん良いお年を.


次回:上限・下限